「銀河鉄道の夜」ご来場頂きまして、真にありがとうございました。
団長の田中円です。
今回の公演は、私たちにとって大変価値のある公演になりました。
言葉に出来ない苦しみ、絶望、そう言うものに振り回され
表に出せないことも、いっぱいあります。
それでも、信じて創りました。
何か少しでも感じていただけたなら幸いです。
虹創旅団はこれからも走り続けます。
最後に私の支えの一つとなった、賢治の詩を書き写して終わります。
この度は本当にご来場ありがとうございました。

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無声慟哭 作/宮沢賢治

こんなにみんなにみまもられながら
おまへはまだここでくるしまなければならないか
ああ巨きな信のちからからことさらにはなれ
また純粋やちいさな徳性のかずをうしなひ
わたくしが青ぐらい修羅をあるいてゐるとき
おまへはじぶんにさだめられたみちを
ひとりさびしく往かうとするか
信仰を一つにするたったひとりのみちづれのわたくしが
あかるくつめたい精進じゃうしんのみちからかなしくつかれてゐて
毒草や蛍光菌のくらい野原をただよふとき
おまへはひとりどこへ行かうとするのだ
(おら、おかないふしてらべ)
何といふあきらめたやうな悲痛なわらひやうをしながら
またわたくしのどんなちいさな表情も
けっして見遁さないやうにしながら
おまへはけなげに母に訊きくのだ
(うんにゃ ずゐぶん立派だぢゃい
けふはほんとに立派だぢゃい)
ほんたうにさうだ
髪だっていっさうくろいし
まるでこどもの苹果の頬だ
どうかきれいな頬をして
あたらしく天にうまれてくれ
(それでもからだがくさえがべ?)
(うんにゃ いっかう)
ほんたうにそんなことはない
かへってここはなつののはらの
ちいさな白い花の匂でいっぱいだから
ただわたくしはそれをいま言へないのだ
(わたくしは修羅をあるいてゐるのだから)
わたくしのかなしさうな眼をしてゐるのは
わたくしのふたつのこころをみつめてゐるためだ
ああそんなに
かなしく眼をそらしてはいけない


※あめゆきとってきてください
※あたしはあたしでひとりいきます
※またひとにうまれてくるときは
こんなにじぶんのことばかりで
くるしまないやうにうまれてきます
※ああいい さっぱりした
まるではやしのなかにきたやうだ
※あたしこわいふうをしているでせう
※それでもわるいにほひでせう